商社マンの説明する「商社とは?」

Why SHOSHA?
海外のお客さんと仕事をしていると、こういうシーンに遭遇することがある。何で商社なんだ?…単純ではあるが商社にその存在意義を問う、もっともキツい質問だ。合理的に考えれば、中間者の存在なんてコストアップと時間の浪費でしかない。最近は、日本のお客さんからでさえ、聞かれることがある。
何で商社なの?
この質問に答えるには、そもそも商社とは何なのか、ホワッツ・ショウシャ?を解かねばならない。
結論から言えば、商社はルーターである。

ルーターというのはネットワークにおいて、パケット、即ちデータを適切に流す機器のことだ。
例えば、ある会社で複数の従業員が同時にPCを使っており、ひとつのネットワークに全員が接続していたとする。そのネットワークを使って、各々の従業員がPCを使ってインターネット上のWeb Siteをブラウズしたり、メールのやりとりをしたりする場合、正確にかつ効率的にデータのやり取りをする為には、誰かがデータの中継をして、正しいところに送ってあげたり、送る順番に優先順位をつけたりする必要がある。
これをやってくれる機器をルーターといい、その機能をルーティングという。
(厳密にはルーター以外にもスイッチング・ハブなども同じような機能を提供する)

伝統的な輸出入ビジネスから、最近よく取り沙汰される「事業投資」まで、商社の働きはまさにこれに他ならない。輸出入ビジネスにおいて「中継点」たる商社の機能を「ルーター」と表現すること違和感はないだろう。では、「事業投資」ではどうなのか?新聞の記事などを見る限り、あたかも商社が自ら事業会社の経営を行い、現場にも従業員を送り込んでオペレーションを行っているかのような印象を受ける。しかしその実、商社が行っているのは、ヒト(従業員・顧客)・モノ(商品・設備)・カネ(資金)のアロケーションだけなのだ。実際に事業を営んでいるのは適切な位置に流されたその業界のヒトに他ならない。「事業投資」というのは、ある企業に対する発言権を強め、自在に配置するためのひとつの手段でしかないのだ。勿論、経営においては明確な意思決定と適切なリソース配置が最も重要であるから、経営そのものがルーター的であると言えるのかもしれない。
繰り返しになるが、商社それ自身はルーティング以上の特殊機能は有していない。例えば、事業投資以上に複雑な仕組みを持っているように見られる金融事業でさえ、商社自身が投資銀行のように金融商品を開発しているわけではない。商社は金融というフィールドで道筋を作っているに過ぎないのだ。

さて、こうして考えるとなぜ「商社不要論」が常に叫ばれ続け、その一方でなぜ商社がなくならないのかも明らかだろう。そう、「ルーティング」は非常に簡単で、一見無価値に見えるのだ。しかし実際には、ルーターなしでは適切にビジネス上のパケットが適切に流れないのである。
そうは言うものの、性能の悪いルーターは排除されるべきである。或いは機能の低いルーターは、サーバーやPCなど他のネットワーク上の機器が機能を兼用したほうが無駄がない。だからと言ってルーター自身が今からサーバー機能を持とうとするのは滑稽だ。既に技術が確立された分野に対し、後発が優位性を発揮できる可能性は非常に低いからである(ないわけではない)。

本稿で筆者が述べたいのは、商社はもっと自分自身がルーターであることを自覚すべきだということだ。実は、上に述べた内容は商社自身が一番よくわかっていない。ルーターの重要性についても理解していないし、自分自身がルーティング以上のことができないということもわかっていない。商社自身が、「事業投資」や「金融事業」への取り組みで、自分たちが新しいバリューを提供しているかのような錯覚に陥ってしまっているのだ。
単純なルーティングだけでは存在価値が認められないのは事実だろう。だからこそ、複雑化していくビジネス世界で、より高機能なルーティング機能を提供すること、それこそこれから商社が提供すべきサービスだと我々商社マンは自覚せねばならない。


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